チッソ(N)/野菜の肥料・養分【欠乏症と過剰症】

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チッソ(N)/野菜の肥料・養分【欠乏症と過剰症】

なくては生長できない「チッソ」

こんにちは。三澤です。
野菜を良く育てるために必要な肥料、養分の解説シリーズ、今回は「チッソ(N)」です。

チッソは、野菜が生長するために、もっとも多く必要な養分です。
光合成で作られる炭水化物と結びついて、アミノ酸となり、タンパク質となり、細胞を作ります。
チッソがなければタンパク質が作れず、根、茎、葉、花、実、あらゆる器官が作れません。
作物の収穫量をもっとも左右する養分がチッソです。

とくに、作物の生育初期には盛んに細胞分裂が行われます。
初期生育が悪いと、その後の生育も左右します。
チッソは、常に不足しないように注意が必要ですが、過剰になっても、野菜の健康を損なってしまいます。

チッソは、野菜の体内を移動しやすい養分で、欠乏、過剰、どちらにも傾きやすく、その症状がもっとも敏感に出やすい要素と言えます。



チッソの欠乏症

チッソはもっとも欠乏しやすい養分です。
「光合成」を行う葉緑素にはチッソが含まれ、チッソが足りなければ光合成能力が落ちて生育が衰えます。
不足するとすぐに欠乏症が現れ、下葉から淡緑色から黄色に変化し、やがて全体の葉色が黄色くなり、木の伸びも悪くなります。

チッソ欠乏は生育のあらゆる段階で起きますが、生育初期からチッソが不足している場合は、ほとんど生長しません。
トマトやナス、キュウリなどの果菜タイプの野菜は、栄養生長と生殖生長を同時に続けるため、常にチッソを切らさない施肥が大切になりますが、チッソが多すぎて良いことは1つもなく、光合成で作る炭水化物とのバランスが常に重要になります。
チッソが欠乏すると、葉は小さくなり、果実も大きくなりません。

十分なチッソを与えているのに欠乏症が出る場合、原因の1つに、未熟な堆肥や有機物の投入があります。
微生物によって有機物が分解される際に、チッソをとられてしまい、作物がチッソを利用出来ない「チッソ飢餓」が起こるためです。
また、土壌が砂質土の場合は、雨水や灌水によってチッ素が流れてしまいやすく、欠乏が発生しやすくなります。

定植時期が遅れた苗を「老化苗」といいますが、老化するとチッソが潜在的に欠乏し、光合成する力、タンパク質などを合成する力が落ちるため、たくさんの収穫を期待することはで出来なくなります。

果菜タイプなどでは、栽培後半、なり疲れなどによる樹勢低下による老化も、チッソ欠乏症状の1つです。

木が老化すると、キュウリやオクラが曲がる、ナスの花が落ちるといったさまざまな生理障害につながります。

葉菜タイプのホウレンソウやコマツナといった野菜では、チッソが欠乏すると大きくならず、収穫量が落ちます。また、葉が硬くなり、美味しくなくなってしまいます。



チッソの過剰症

チッソ過剰の典型的な症状は、葉の緑色が濃くなりすぎること、生育が旺盛になりすぎることです。
また、葉は薄く、大きくなりすぎ、縁が垂れたようになります。
このような葉は、大きく見えても、実際には厚みのある葉と比べて光合成の力は落ちます。

多収穫にするためにはそれだけチッソが必要ですが、過剰になれば、徒長や葉の繁りすぎを招き、野菜の体を守る繊維質が減ってしまうため、生育が軟弱になり、病害虫の被害に遭いやすくなります。
これは、チッソが多いと、光合成で作られた炭水化物がタンパク質を合成するために多く使われ、カラダを守るセンイづくりにまわる炭水化物が減ってしまうことが原因です。
また、多すぎるチッソは、タンパク質に合成されず、水溶性で残ります。
これが、さらに病害虫を招く原因になります。

果菜類では、チッソが多すぎると実をつける生殖生長に切り替わらず、トマトやスイカのツルぼけ、ナスの落蕾、イチゴの花芽分化の遅れ、赤い色がなかなかつかない、甘みが少ないといったことが起きます。

また、チッソが多すぎると、カルシウムの吸収が阻害され、土中にカルシウムが十分あるのにカルシウム欠乏症を起こすことがあります。
カルシウムが足りているのに、トマトの尻腐れや、ハクサイの芯腐れが起きるようになります。
チッソの過剰症が起きた場合の対策として、多量の灌水でチッソを流亡させる方法があります。
ただし、水はけの悪い土の場合、多量の水によって根腐れを起こすことがあり、注意が必要です。

関連記事

野菜の生長にとって欠かせない養分「チッソ」ですが、そのほかにも、健康な生育のために必須な養分がいくつかあります。

以下の記事では、野菜にとっても人間にとっても、なければ一瞬も生きられない様々なミネラルについて解説しています。
併せてお読みください。

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